2017-06-20(火)

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先日、中山英之さん設計の住宅 《2004》 (2004)  を街中で見つけた。地面から1mほど持ち上げられ,サッシの目立たないガラスで周囲は囲われている。一見、白い箱が浮いているように見える。草木の生えていない、砂利の地面から浮遊してみえる光景は、隣家から距離をおいた異質な存在に見える。

 

キッチンや風呂のある生活階は、地面から約1m上にあります。そこから下向きに吹き抜けを開けて、土間コンクリートを敷き、ガラスで囲いました。生活階を見下ろすと、残された2004年の地面だけが、ガラス越しの標本のように見えます。吹き抜けに下りると野良ねこの目線で、かつてそこに寝ころんだ時と同じように、目の前にクローバーの葉1枚1枚が見えます。

           

                        「新建築2006年12月」より抜粋

 

当時は、床面の位置を再考することで、住人はクローバー畑で寝ころぶ子供時代の幸福な記憶を思い出し、自然と自分との関係を強く意識することができていたと想像できる。 だが竣工から10年ほど経ち、この住宅周辺の廃田には次々と住宅が新しくたった。また、今の時期ならクローバーが生えていてもいいはずだが、どういう訳だか一本も見当たらない。

この住宅の空間体験は、周辺環境からものすごく影響を受けやすいと思われるが、窓から見える景色の変化は、住人に今も自然との繋がりを強く意識させることはできているのだろうか。